ラッパーズヴィルは、チューリッヒ湖のほとりに位置する小さな街です。
ラッパーズヴィルの「ラ」はぜひ巻き舌で発音してみて下さい(笑)
どこの街も季節によってまた違う表情を見せてくれるのが旅の楽しみのひとつでもあります。
わたしが初めてラッパーズヴィルを訪れたのは夏でした。
とても蒸し暑い日で、街全体を見渡すお城に登ったのはいいものの、日差しが強過ぎて苦しかったのを覚えています。
今回は真冬に訪れましたが、どちらの季節もそれぞれ美しく、ゆっくりとした時間が過ごせます。
チューリッヒ市街地からは船で一周するのがおすすめです。
交通手段のひとつとして現地の人々も使っているので、気軽に乗ることができます。
チューリッヒからラッパーズヴィルまでの片道は約2時間。往復で約4時間です。
スイスアルプスを遠くに眺めながら、かもめと一緒に気ままな船の旅です。
看板に出ると湖の爽やかな風がとても気持ちよく、太陽も眩しく、素晴らしい時間が過ごせることと思います。
2時間で映画がまるまる1本観れるように、わたしの船での2時間も濃厚でした。
青い湖を見ながら食べた、街のケーキ屋さんで買ったモンブラン。
船が水を走る音。
遠くに見える雪化粧をした山々。
たまたま目があった、クスナクト(Küsnacht:ドイツ語で「キス、夜」という意味の名前の街です)から来ていた元気なおばあちゃんと色々な話をしました。
若い頃に旅をたくさんした話や、今までの人生で学んだこと。
そしてどんなにスイスの山や自然が美しく、そこに暮らすのが幸せかを話してくれました。
おばあちゃんの柔らかい笑顔を見ていたら、何十年住んでもこの夕焼けの美しさはやっぱり特別なんだなと思いました。
さようならの代わりにハグと「Schönen Abend」(ドイツ語で「have a good evening」の意味)の挨拶を交わしました。
乗船客の中には、お買い物に行くひと、通勤中のひと、友達に会いに行くひと、わたしと同じ観光目的のひとなどがいました。
中でもわたしの目を惹いたのは、床に座って読書をしていたスーツ姿の女のひとでした。
恐らく彼女は毎日のようにこの船に乗って仕事に行っているのでしょう。
とても贅沢な通勤時間だと思いませんか?
彼女の横顔はそれを知っているかのように穏やかでした。
それを見てふと思いました。
わたしが電車通勤で東京に向かう途中、晴れている日によく富士山を見ることがあります。
富士山が見れた日は何となく気分が明るく、前向きな一日を過ごす事ができるような気がします。
そんな時、同じ車両に同じく富士山を見つめているひとを見つけると何だかほっこりとします。
いつもの日常も少し見方を変えたり、別のひとから見れば、とても特別なものだったりします。
そして、一人ではなかなかそういう事に気づけなかったりします。
勿体ないです。
不器用なんでしょう。
でもだからこそ、そういうちょっとした発見はわたしたちに何か光をもたらせてくれます。
普段気にしないものに気づいたり、何かについて新しく考えたり。
わたしは街で「旅人」を観察するのがすきです。
旅をしている人のカメラの先や視線の先には、何かわたしをはっとさせてくれるものがあるかもしれないからです。
まばたきをひとつ。
くしゃみをひとつ。
真冬の静電気みたいな、ちいさなショック。
*船の小旅行の情報(英語、ドイツ語)*
http://www.zsg.ch/en_home.html右:ラッパーズヴィル城から見た街(夏)
左:船から見たラッパーズヴィル(冬)
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